2012年10月27日土曜日

不愉快な軽口

 今日は次男坊と姫が通う日本語学校の文化祭。
スーパーボールすくいに輪投げ、メンコ、射的。。。いろいろ日本のお祭りのようなコーナーもあって,毎年子ども達が楽しみにしている。
今年も授業が終ってすぐに友達と一緒にお昼を食べて,子ども達も張り切っていた。

 母親の私も順番を待ちながら友人達とおしゃべり。
いつもの学校とも違う場で親子共々楽しんでいた時,思わぬ不愉快な出来事があった。

 書道の体験コーナー
この国でくらして、筆を持つ機会がそんなにある訳ではない。次男坊が楽しそうに挑戦した。
いろいろなお手本が隣にあったのに、何を書き出すかとおもったら、次男坊は自分の名字を嬉しげに書き始めた。



 「吉原」と大きく書いた次男坊。それでも次男坊が書きたい文字なのだろうと思って微笑ましく見てる私の横に、話したこともない父兄がやってきて、誰に言うでもなく思わぬことを言って来た。

 次男の作品を読む必要もない人なのに、急に私の側にやってきて「よしわら」と読んだのである。
そこでわたしが「よしはらです」と言い返すと、「あっ地名じゃないんだ」と言って私にニヤッと笑った。

 たったこれだけのことと、そう言われればそれまでだ。でも、会ったことも話したこともない男性に言われて、私は返す言葉もなく不愉快で顔を背けた。

 九州生まれの夫の姓は、九州地方の方ならあたりまえで「よしはら」と呼んでくれる。
それが関東地方に行くと、風俗産業の影響もあって「よしわら」と間違える人がいる。
それは仕方がないことだと私も思う。

 実際、漢字はいろいろな読み方がある訳だから、同じ名字で「よしわら」と読む方もいらっしゃるだろう。
しかし,わたしが訂正しているのに、その風俗産業の地名と混同して私に「地名じゃないんだ」と、その言葉を投げかけてくるのは明らかにセクシャルハラスメントだと思うし、実際私は震えるほど不愉快だった。
 それともその父兄は、今は使われていない静岡地方の地名を指したというつもりなのだろうか。

 100歩譲って冗談だったとしても、学校という場で、嬉しそうに自分の姓を書いたこどもの前で、その「冗談」をどう説明するつもりだったのだろう。
 自分の姓を嬉しそうに書いていた息子を、この父兄は、風俗業界に関係する言葉を楽しげに書いている男の子とでもみていたのだろうか。そう考えたら,私へのセクシャルハラスメント以上に,息子を侮辱された思いで母親として許しがたい。

 私は今日あったその保護者の名前も知らない。同じ学校に通っていても、今まで接点など一度もなかった人である。それ故に謝罪を得られると期待もしていない。
しかし、これをもし読む機会があったなら、あなたの軽口で、この様に楽しい文化祭の気分をこわされ傷ついた者がいることに思いを馳せてほしい。
 そして,二度とそのようなあなたにとっての「冗談」を、他人に浴びせることはやめてほしいと思うのである。


 追記 (Nov. 2. 2012)


 昨日、この保護者の方からメールをいただいた。

 セクシャルハラスメントの問題はむずかしい。
この方は次男の書いた文字を見て、「風俗と関連つける意味合いはまったくなかったし、思いもしなかった」とおっしゃるけど、私は明らかにセクシャルなイメージを持って彼の発言を聞き、屈辱感から不快に感じたのだ。

 省みて、夫や息子達が同じ立場になった時を考えると恐ろしく思う。
アメリカで育つ息子達に、日本の常識は難しい。
夫はもちろん,息子達にも、読み方を訂正した人に対して失礼を詫びることもない人間に育ててはいないとは思うが,いつ、この保護者のような失敗をしてしまうとも限らないと思うからだ。
 セクシャルハラスメントは、このように言葉を発した側の「意図していない」発言であっても、相手が性的に不愉快感をもった時点で成立してしまう。
そこが怖いところだ。

 この保護者の方は、「弁明の余地はありません」と謝ってくださった。
私は、この謝罪をありがたいという気持で受けようと思う。


 セクシャルハラスメントは、男性から女性というひとつの方向だけではない。私や娘も同じような間違いをしてしまうかもしれない。
多様な性を認める今、私もいつ加害者になるかわからないのだ。
そんなことを考えさせられる出来事だった。